算数教育とプログラムの違い

1 算数教育にとって便利な特性

プログラミングが算数教育にとってよいところは、問題内容を細分化し、解き方の流れを考えながら処理していき答えを導き出すというプログラミング的思考がマッチしているところです。

四則計算や角度、概数や図形など幅広い算数教育の内容に沿ったツールが用意されています。二次元の画面ですが、アニメ的に動くプログラムでより理解を深めることができます。現代の子どもたちは、動画を鑑賞することに慣れていたり関心が高かったりするので、よけいに動画的なパフォーマンスは便利な特性と言えるでしょう。

約数や倍数を全て求めるときも、命令を設定しておけば同様の処理を繰り返し、瞬時にそれらの数を列挙してくれます。グラフを描く時もデータを入れておくだけで、手作業で描くよりも正確で美しく見やすいグラフを描くことができます。

同じことを間違えなく何度も瞬時に繰り返すことができるパソコンの能力は、算数の問題を考えるときに大いに役に立ちます。

2 算数教育にとって本筋ではない特性

機器の利用が算数科を学ぶときに便利で効果的であるという内容を書きましたが、パソコンで処理することで人間の手作業的な学習には適さない部分もあります。

例えば、プログラミング教育が始まるといっていた頃、説明文章の中によく登場してきた正多角形を描く問題に疑問点があります。プログラミング的には、「線を引いて120度曲がって」の命令を3度繰り返せば正三角形が描けます。「引いて曲がって」を繰り返せば、「正〇〇形」が描けるのです。

プログラミング教育の説明では、このことが例示として大きく取り上げられています。

しかし、算数科の教科書では、「円と正多角形」という単元名で、必ず円を描いて中心角を等分にして半径を引き、円周と交わった点をつないでいくことで正〇〇形を描くことができると学びます。円の性質を理解することも兼ての正多角形の作図です。

ですから、プログラムも当然、教科書に沿ったプログラムを学ぶことが必要であるし自然でもあると考えます。唐突に「引いて曲がって」では、単に作図の手法だけの学習となり教科内容の深化にはなっていないからです。便利であり合理的でもあり、いかにも無駄のないプログラムです。しかし、内容によっては、算数教育で学ぶことの領域から外れてしまっているものも出てきます。その辺りもよく吟味しながらプログラミング教育を進める必要があると考えます。