小さなパソコン、マイクロビット

1 フィジカルプログラミングとは

以前勤務していた学校で、面白いツールを持っている先生に出会いました。「マイクロビット」という小型パソコンです。子ども達にとって、実際に五感を使って学ぶのは分かりやすくて楽しいことです。このツールは、まさに体で体験するプログラミングツールです。

前にご紹介しましたとおり、プログラミングの3種類のうちで用具を使い一番機械操作的なのがフィジカルプログラミングになります。車やロボットなど具体的な物体を動かしますが、各種センサーを付けたマイクロビットの利用も入ると考えます。

町場のプログラミング教室では、この具体的な物体をプログラム命令で動かして制御することを学ばせることが多いです。

教育の現場で働く教職員の研修でも、当初は車を動かすなどの実践が多くありました。教師の正直な感想としては、「おもちゃを動かしているようで楽しいけれど、子ども達に身につく力はどうなんだろう。」という感じでした。

このような研修を担当してくれる大学や企業などと結びついて、当初のプログラミング教育は実施されていきました。

学校独自の教材教具として、マイクロビットを活用していた学校もあります。この小さなコンピュータは、イギリスの放送局が無償で各学校に配布したもので、様々なセンサーを持つものです。

そして、ネット上ではマイクロビットに命令をすることのできる「スクラッチ」のようなブロック組み合わせ的なビジュアル言語がありました。

スクラッチ単独では、表現できないこととして、外部からの情報の活用があります。照度・温度・振った回数・傾き・ボタンなど外部からの働きかけから得られる情報をプログラムに加えることです。

2 マイクロビットの利用例

マイクロビットは、基盤(板)です。この板には、明るさを感知する部分や温度を感知する部分・板を振った回数を感知する部分・上下左右の板の傾きを感知する部分がセンサーとして付いています。

小学校高学年の理科の教科書では、人感センサーなどとプログラミングのことが情報として掲載されています。勿論マイクロビットでも別売りで人感センサーとして利用できる部品も用意はされています。しかし、板単独でできることから実践していくことは十分に可能です。

通常学級ばかりではなく、特別支援では具体物を扱うという方が抽象的な画面操作よりも理解しやすく楽しめるというところがあります。

一例をあげると、マイクロビットを両手で包んで暗くなったら「クンクン(弱気な犬の鳴き声の効果音)」を再生し、両手を開いて光にあてたとき「ワンワン(強気の犬の鳴き声の効果音)」を再生するように照度の数字を条件として「もし~ならば」の条件ブロックを活用し、効果音の再生と結びつける命令をプログラムします。

このときには、子ども達の意見を聞きながら、「暗くなったらどんな音にする?」などと投げかけながらプログラムを完成させていきます。

マイクロビットは、USBで100均の電池ボックスとつなげば、コンピュータを接続した電子黒板から距離をとってブルートゥースでつなげることができます。ですから、子ども達は立つこともなく自分の席で体験することができます。そして、多くの子ども達に回しながら体験させることができます。

分たちで細かな命令を組み、手軽に実践できるこのやり方は、一斉授業方式でも十分できます。そして、費用も板一枚の代金で済みます。子どもの反応をしっかり観察でき、みんなでプログラムの検証をできる授業は、大変興味深いものになります。